ECのプロから見たMagento(マジェント)の評判と考察

日本ではオープンソースで無料構築が可能なECプラットフォームといえば「EC-CUBE」が有名ですが、世界シェアナンバー1のプラットフォームは「Magento(マジェント)」です。

特に自社開発で越境ECの構築を考えている方は、海外で実績のあるMagentoが有力な選択肢となるでしょう。なぜなら、Magentoは日本よりも複雑な税制度・国内に多くの多言語を有するヨーロッパやアメリカ、最近では東南アジアでも使われているため、越境ECのプラットフォームとしては「EC-CUBE」よりも最適です。

ただし、導入には海外のオープンソースであるために自分達で、英語のMagentoのコミュニティサイトなどを読み解く英語力やリテラシーが必要となります。

本日は世界一普及しているMagentoの導入について、EC-CUBEとの比較を交えて、メリット・デメリットなどもあわせてECシステムのプロが解説いたします。

※この記事を最初に書いたのは2017年。2022年7月に加筆修正を行いました。

2018年5月にMagentoは「Adobe」が買収

この記事を書いたのは2017年でしたが、2018年5月になんとAdobeに買収されました。しかし、2020年にコロナ禍の時代になったことを考えると、このAdobeの買収のタイミングは完璧としかいいようがありません。

Adobeの製品ラインナップに入ったものの、無償のオープンソースとしては変更がありません。

日本企業が導入すべきオープンソースは「EC-CUBE」と「Magento」どちらが良いのか?

導入する目的や、自社の開発スキルによってどちらを導入すべきかが変わってきます。

①アメリカ・ヨーロッパで越境ECを構築する場合は、Magento!

日本でデザインやサイト構成が優れたECサイトを、そのまま外国語対応しただけでは海外でも通用するわけではありません。国が異なれば、その国のECサイトユーザーが好む画面デザインや、インタフェースがあります。

例えば、海外のECサイトは多くの商品情報のテキストより、画像が大きく使われ、テキストは少なめにシンプルです。こういったことを前提に考えると、越境ECで海外に展開するときは、すでに世界15万サイトで導入されているMagentoの方がデザイン面やテンプレートデザインで長所があると言えます。

また、Magentoは各国の税率に対応しているなど、多通貨、多言語を前提に作られたECサイトシステムであり、日本国内前提のEC-CUBEよりも有利なのは明らかです。

ただ、マジェントはAdobeに買収されてから、公式ページとかがよくわからなくなりました。筆者が英語が苦手ということもあり。。いろいろググっるとマジェントがダウンロードできるとおもうので、その点はご了承ください。

中国人向け越境ECの構築はカンタンだが、集客が難しい!

Magentoに限りませんが、その国の言語や決済に対応したECサイトを作っても、中国人向けの越境ECのマーケティングは大変です。中国人ユーザーのほとんどは商品を購入する時に検索エンジンは使いませんし、また中国ではGoogleは使えません。

中国の検索エンジンはバイドゥという中国産検索エンジンで、日本企業がバイドゥにインデックスされるには、中国政府からもらう企業IDが必要で、カンタンなことではないのです。

ですから中国語でサイトを作っても、中国人がそのECサイトを発見する術がないのです。中国では、ショッピングモールのアリババとT-mallがシェアの80%以上を握っており、中国人向けの越境ECを成功させるには、「インバウンド(訪日中国人)向けに中国人のメールアドレスを取得してリピート施策を行う」などの独自の対策が必要です。

Magentoでカンタンに中国人向けのECサイトを作ることはできますが、売上を立てるのは大変な苦労が伴います。一方でGoogleが使われている国ならば、検索エンジン経由での越境ECの集客が可能ですから、Googleが使えない中国には、それなりの集客対策が必要になるのです。

②日本国内向けのECサイト構築や、オープンソースでの日本人の開発が前提なら、EC-CUBE!

ターゲットユーザーが日本人に限られる場合は、MagentoよりEC-CUBEが前提となるでしょう。もちろんEC-CUBEが日本でナンバー1のオープンソースプラットフォームというところが大きいのですが、一番の理由は開発環境をサポートする日本語での情報量です。

EC-CUBE開発コミュニティー:https://xoops.ec-cube.net/

オープンソースをカスタマイズしていくには、提供されている情報量が開発スピードや品質に影響します。

日本人技術者がECサイトを開発する場合は、英語のMagentoよりも、日本語で提供されているオープンソースのEC-CUBEを選ばない理由はありません。(余談ですが一人前の日本人技術者ともなると、翻訳前の海外の一次情報元を読み解くのは当たり前でもありますが。)

EC-CUBEで越境ECサイトの構築も可能

国内で実績があるEC-CUBEですが、有料で越境EC用のプラグインもベンダーから発売されております。

越境EC用プラグイン:https://www.ec-cube.net/products/detail.php?product_id=1404

33万円の高価なプラグインですが、自分達でゼロからカスタマイズするよりは安くつきます。

複数のマルチサイト(マルチドメイン)を1つの管理画面で管理できるMagento!

Magentoの大きな強みは、複数のドメインの異なるマルチサイトを構築しながら、1つの管理画面で管理できることです。例えばアパレルでブランド毎にサイトのドメインを分けて、マルチドメインを構築することがありますが、通常であれば、サイト毎に管理画面も分かれます。

しかし、Magentoでは、一つの管理画面で複数のECサイトを運営することが可能です。ですから、「英語のサイト」「中国語のサイト」「日本語のサイト」といった具合に各国の言語、通貨の表示方式も管理画面を1つで運営することができます。

◆サイト毎に独自設定が可能な項目

・サイトデザイン
・商品
・表示通貨
・決済方法
・送料
・ポイント

オープンソースの脆弱性(デメリット)とは?

まず、下記の記事をご覧ください。Magentoからデータが抜き取られた2021年3月の記事です。

狙われた「Magento 2」eコマースサイトでデータが抜き放題になる事例の報告

Magentoにしろ、EC-CUBEにしろオープンソースはライセンス費用が無料で、ECサイト構築が安くできるというのが最大の魅力ですが、オープンソースの脆弱性という点を忘れてはいけません。

脆弱性が絶対にないシステムというのはこの世に存在しませんから、開発元より最新のモジュールが開発されたり、セキュリティーパッチが提供されており、その点ではMagentoも同様に最新のモジュールを入れてアップデートする必要があります。

しかし、オープンソースを自社でカスタマイズをしてしまうと、最新モジュールが導入できないことがあるのです。そうなるとせっかくMagentoでライセンス費用を無料で導入したとしても、バージョンアップができないためシステムの陳腐化が発生します

ですから、企業が費用を抑える目的でオープンソースを使って独自のカスタマイズECサイトを構築することは、長期的に見ても安いとは言えません。

自社に技術力のあるメンバーがいる場合で、完全に自社でメンテナンスを行う場合も5年も経てば、最初に構築した技術者が転職していなくなる可能性は高く、システムがブラックボックス化してしまいます。

こういった理由から、企業がオープンソースやフルスクラッチという手法でカスタマイズECサイトを作るのはマーケットの主流ではないのです。

現在はクラウド全盛の時代ですから、企業がECサイトをつくる場合は、システムを陳腐化させない方法、つまり小規模ならASPでのECサイト構築、中大規模ならクラウドECでのECサイト構築手法が中・長期的に費用を抑えることができるのです。

Magentoを使ったパッケージを販売するパートナー企業もありますが、事前に契約書の確認が必要!

Magentoなどのオープンソースをカスタマイズして自社パッケージとして販売するECパッケージ会社が多くあります。

それらの企業にECサイト構築を依頼する場合は、契約書をよく確認することが重要になってきます。もし「Magento本体のバグについては関知しません」という文言が書いてある場合は要注意です。

Magentoはフリーで提供しているものですから、仮に大きな欠陥があったとしてもMagentoに責任は生じません(当たりまえですが)。

しかし、Magentoを使ってカスタマイズし、独自のパッケージを販売している場合で障害が発生した場合に「Magento本体のバグなのか?カスタマイズ領域のバグなのか?」はっきりしません。

契約によっては「Magento本体のバグ」の場合、業者から「これはうちのバグではない」と主張された時は、責任の所在がわからなくなるからです。

そういった場合にトラブルにならないように、保守契約を事前に業者に確認してください。

Magentoのライバルは?

日本国内ではEC-CUBEが先行中!

世界で25万サイトに導入されているMagentoも、日本ではEC-CUBEが圧倒的ナンバー1のオープンソースのECプラットフォームです。

しかし、2018年の現在はMagentoを日本国内で導入する企業も増えており、Magento導入による越境ECサポートのパートナーも増えています。カスタマイズする場合の日本語サポートは、限定的ですが、標準機能で導入する場合の日本語の情報は十分です。

越境ECが前提なら、オープンソースではMagentoも有力な選択肢になるでしょう。

EC-CUBEの記事はこちらをご覧ください ==> ec-cubeは時代遅れ?【個人や企業でEC構築

企業がECサイト構築する場合は、クラウドECが主流に

年商1億円以上の中・大規模のECサイト構築が前提の場合は、カスタマイズが前提となります。そしてカスタマイズを行うとシステムの陳腐化が起こります。この問題を解決したのが、クラウドECです。

クラウドECとはECのパッケージ大手のecbeingやクラウドECナンバー1のebisumartが採用している方式で、企業毎の固有のカスタマイズを行いつつ、システムが常にバージョンアップされる方式です。

ECサイト年商が1億を超える企業規模の場合、システムの中長期的メンテナンス費用を抑えることができます。なぜなら一度導入すれば、二度とシステムリニューアルの必要がないからです。

クラウドECの記事はこちらをご覧ください ==> クラウドEC導入のメリットとデメリット【大手3社とは?】

Magento導入は標準機能をベースに使うのが一番!

Magentoはカスタマイズせずに標準機能と提供されているプラグインの導入だけで、運用するのがベストだと考えます。

自社フローや要望に合わせるためにシステムをカスタマイズする企業が日本では多いのですが「自社の運用フローや要望をシステムに合わせる」という考えであれば、カスタマイズせずに導入することができるのです。その結果コストを押さえ、早期にシステムを導入することができるのです。

また、Magentoを標準機能ベースで運営できればバージョンアップが絶えず可能ですが、カスタマイズしてしまうと、システムが陳腐化します。

年商が1億円以下のECサイトの場合は、まずはオープンソースの標準機能+プラグインだけで運営してみてはいかがでしょうか?それ以上の中・大規模のECサイトの場合はクラウドECの導入を検討してみましょう。

おすすめ記事!【ECパッケージ徹底比較】年商10億円以上に最適なECパッケージは?

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